CBDCは金融政策を変えるかが目から鱗だった。

Fintech

こちらは2020年4月28日に行われましたJBA主催の定例会の内容をまとめた記事になります。

定例会では株式会社LCNEM CEO,CTOの木村優さんよりCBDCについて発表がありました。

木村優さんのTwitter
https://twitter.com/KimuraYu45z

「CBDCは金融政策を変えるか」 プロジェクトステラの考察にインターオペラビリティの考察を添えて

自己の見解を含まずできるだけプレゼンに忠実に書かせていただきます。

またプレゼンの資料も公開されていますので、下記リンクを参照ください。
https://drive.google.com/file/d/1BZX60YJYxpfbf5IjrEYYEvH1Ts8WvXtL/view

プレゼンは大きく分けて以下の二部構成になっていました。

・プロジェクトステラの考察

・CBDCは金融政策を変えるか

この中でプロジェクトステラへの考察が目から鱗すぎたので、まとめさせていただきます。

プロジェクトステラの考察にインターオペラビリティの考察を添えて

CBDCとは?

CBDCとは

Central Bank Digital Currency (中央銀行発行のデジタル通貨)

の省略になります。

つまり中央銀行(日本銀行)が円を管理しているシステムにDLT(分散型台帳技術)を導入するという意味合いであり、現状においては新しい通貨を発行しようという試みではありません。

また、CBDCやDLTについては以前からProject Stellaによって調査が行われていました。

Project Stella : 日本銀行・欧州中央銀行による分散型台帳技術に関する共同調査報告書

・日本銀行と欧州中央銀行は、2016年12月、共同調査プロジェクト「プロジェクト・ステラ」を開始した。本プロジェクトは、概念整理と実機検証を通して、DLTが金融市場インフラに対してもたらしうる潜在的な利点や課題を洗い出し、議論を促進することを目的としている。本プロジェクトの研究成果として、これまで、3つの報告書——フェーズ1(DLTを用いた大口資金決済、2017年9月)、フェーズ2(DLT環境における資金と証券のDVP決済、2018年3月)、フェーズ3(DLT関連技術を用いることでクロスボーダー送金の安全性等を改善しうるかの検証、2019年6月) ——を公表している。
日本銀行公式サイトより引用
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200212a.htm/

このプロジェクトステラにおいて、木村さんはフェーズ3に注目しているといいます。

フェーズ3においてはクロスボーダー送金についての調査が行われていました。
クロスボーダー送金とは、名前の通りボーダー(国境)を超えての送金を行うことをいい。クロスボーダー送金を行う際にどのようにDLTが有用なのかについて研究されています。

ではフェーズ3においてクロスボーダー送金のどのような点に問題意識を置いていたのかというと、それは送金の際の信用リスクについてでした。


スライド5より参照

現状のクロスボーダー送金は複数の法域や主体を経由するため、国内送金に比べ時間とコストがかかってしまいます。そのため以下のような信用リスクが存在します。(上の画像を参考に解説します。)

①「欧州の銀行A」は「日本の銀行C」へ100万ユーロ(1億円)の送金を行いたい。

②「銀行A」は送金のため、ユーロ建て、円建て台帳の二つを有している「銀行B」に100万ユーロを送金する。

③「銀行A」の送金が完了した際に「銀行B」が送金前に破綻してしまう。

④すると「銀行A」はただただ資金を失ってしまうリスクに晒されてしまう。

このようなソルベンシーリスクを回避するための分析がフェーズ3では行われています。
また、そのようなリスクに対して、アトミックスワップ(ビットコイン擁護においてはHTLC=Hashed TimeLock Contract)等を利用したDLTによりこの課題を解決していこうという内容になっています。

アトミックスワップとは?

違う台帳にある異なる通貨を、同時に送信することのできる仕組みを言います。

例を挙げてみましょう。

AさんとBさんがいます。

Aさんは「台帳A’」にユーロを、Bさんは「台帳B’」に円を持っていたとします。

AさんとBさんが同じ価値の金額をお互いに送りあう際にお互いの送金を暗号学的ハッシュ関数を持ちいて同時に行うことをアトミックスワップといいます。これらの取引が同時に行われることによって、どちらかのお金の持ち逃げを防止することができます。

またアトミックスワップは複数の台帳を利用したスケーリング技術としても利用されています。

アトミックスワップは直訳において「原子の交換」となりますが、これは「原子性」を意味し、トランザクションが完全に完了しきるか、すべてが完了していないかのどちらかの状態を示します。
どちらかの送金が先に完了することで持ち逃げが可能になってしまうリスクに対して、すべての取引が完了or何も完了していないというアトミック性が解決策の一つになるということです。

 

アトミックスワップに変わるスケーリング技術としては、「インターオペラビリティ技術」というものも注目されています。

インターオペラビリティ技術には「双方向ペッグ方式(インターオペラビリティ)」と「マージバリデーション方式(準インターオペラビリティ)」の2種類が存在し、今回の考察においては、前者の方にのみ触れていきます。

 

双方向ペッグ方式とは?

「台帳X」と「台帳Y」があり、それぞれの台帳に「資産X’」と「資産Y’」がある際に台帳Xに資産Y’を送信することを言います。アトミックスワップと混同されやすいですが、別物です。

このインターオペラビリティはスケーリングのソリューションとして有効です。双方向ペッグ方式は既存のテクノロジーを用いても実現することが可能ですが、DLTを使用することでこの双方向ペッグの妥当性を分散的に検証することが可能になります。

以上を踏まえた木村さんの仮説が以下の通りとなります。

 

木村さんの仮説

双方向ペッグはクロスボーダー取引のソルベンシーリスク回避にも、アトミックスワップと同様に有効ではないか?

プロジェクトステラフェーズ3においてあげられた課題において、アトミックスワップを用いることで解決可能な課題はありましたが、ひとつ解決できていない課題として「フリー・オプション問題」がありました。

 

フリー・オプション問題とは?

「フリー・オプション問題」とは、異なる台帳間や通貨間での支払において、送金参加者が晒される為替リスクを指す。支払準備の際、送金参加者は、ある通貨建ての特定額を別の通貨建ての相当額と引き換えに支払う責務を負う。この責務は、悪意のある送金参加者に悪用される可能性がある。
図表 16 は送金開始後に送金者と受領者が共謀し、中継者の流動性を拘束する例を示す。この例では、受領者には、①支払を実行(充足)するか、もしくは、②タイムアウト前に拒否またはタイムアウトが到来して支払を中断するか、の選択肢がある。これにより、共謀者は為替レートに応じて、中継者の契約上の義務を悪用できる。すなわち、共謀者は、為替レートが自身に好都合な場合にのみ支払を実行し、さもなければ、支払を中断する。
現在のところ、このフリー・オプション問題は未解決のままであり、インターレジャーの策定を進めるコミュニティにおいて議論が活発に行われている。この問題は、プロトコルの設計により発生するため、第6章で挙げた前提条件が全て満たされている場合にも発生する。なお、この問題は、支払の安全性に直接的なリスクをもたらすものではない。また、送金参加者が、中継者の契約上の義務を悪用し、潜在的な利益を享受することよりも、風評リスクを重視する場合には、フリー・オプション問題は発生しないと考えられる。
Project stella phase 3より引用

要約してしまうと無料でデリバティブを得ることのできる機会を得てしまう問題を指しています。上記の通り、これを行うことによる銀行の風評コストを考えると多発するような問題ではないが理論的には発生してしまう課題としてフェーズ3では掲げられていて、木村さんはこの問題は双方向ペッグ方式を用いることで課題に対する結論が変わる可能性があると述べています。

「フリー・オプション問題」は、そもそも別台帳に存在する資産をアトミック性をもって送信しなければソルベンシーリスクに晒されてしまうことに起因しています。そのアトミック性を保つためのアトミックスワップによって双方の合意を待たなければいけないためタイムアウトが存在してしまいます。

しかし、これが「同一台帳」で行う場合タイムアウトを用意せずにアトミック性を保ったまま取引をすることが可能です。

木村さんからのプロジェクトステラへの提言

以上のことを踏まえて、木村さんからのプロジェクトステラへの提言は以下の通りとなります。

・プロジェクトステラにやる気がまだ残っているのであれば、インターオペラビリティ技術によってフリー・オプション問題を解決する方向性を調査するとよいかもしれない。

・DLTのさらなる有用性を支持する結果になるかもしれない。

また、同時に上記の提言を示したうえで、課題として双方向ペッグを監視するための「レイヤー」の存在が必要になるとも指摘しています。

このように、インターオペラビリティ技術は中央銀行のシステムにCBDCまた、DLTを導入することへの説得力の足しになるとしています。

 

以上が木村さんのプロジェクトステラへの考察になります。

後半の財政政策を変えるかについても非常に勉強になったので、ぜひスライドも確認してみてください。
https://drive.google.com/file/d/1BZX60YJYxpfbf5IjrEYYEvH1Ts8WvXtL/view

木村さんのTwitter再掲
https://twitter.com/KimuraYu45z

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